先日の1月23日に「沢田研二ライブ 人間60年・ジュリー祭り」の放送を観たって、書きました。静止した画面の‘ジュリー’の撮影を終えて、NEC社のテレビのBチャンのブラウン管に、霧吹きをシューシューって磨きながら (2011年までの後2年、頼むな…)と 語りかけた、その夜 Bチャンは 目を閉じました。真ん中の走査線の1〜2本だけが光り 画面全体が‘真っ黒’に…ワタクシよりはテレビ好きの妻が さっそく パチパチとPCに向って調べているので『なに、してんのん?』と 聞くと 「ジャパネットたかた…!」 パチパチパチ 『どー なん?』「楽天市場…」チャカチャカ・ペッシー! 『決まったん?』 「価格コム…!」ペシーッ!パシーッ!パチャパチャ 『どぉ…?』 「ヨドバシ 見てんの…」んゝ もー お任せして 寝よ っと …
翌、日曜日、朝「ヨドバシにいくからねっ!」 『はいっ!』 で 梅田へ『ぼくぅ 42インチくらいでも… 』 「ダメダメ! 全然 大っき過ぎっ!」 『えーーーー!』と ワタクシ もー 妻にお任せして 1階上の白物家電へ移動 で、見飽きたので2階下のカメラ売り場へ とぼとぼ 移動
翌、月曜日、昼 12時ガタイのデカイ2人のおじさんが現れBチャンは軽々と抱き上げられて トラックの荷台に ガタガタッ ゴロン!そして、Cチャンが登場し あちらこちらに線をつながれて 恥かしそうに スタンバイ「終わりました!」と Cチャンと分厚い取説を置き去りにして ヨドバっさん 帰っていった。( やー はじめまして Cチャン… )てな 気分で 改めてスイッチ・オンすると美人で、スマートで、シューっとしてゝ ほんで… 写り込みも無く マット調で和紙を通したように、画が写ってる…今までのBチャンのブラウン管って ( なんだったんだろう…? )的 感動している 毎日です。
■オート三輪きのう 「オート三輪」のことを書きながら子供の頃に「オート三輪」みたいなシャレた言葉 使ぉてたかな?(なんでか、違和感 あるな…?)って 思って書き終えてから… そーやっ!!「バタコ」って ゆーてた なあ…!「バタバタ」は オートバイやったよなあ…?と…… 。ミゼットのCMを見つけました…! 懐かしいです。「やりくりアパート」と ゆーコメディー番組があって番組の最後に、大村崑.さんと佐々十郎さんの掛け合いの生CMが見たくてチャンネルを合わせていたよーな…
■電気釜正式には「自動式電気釜」という名の、電気釜です。「炊飯器」なんて 男前風な名前ではなく こゝはモッチャリと「電気釜」でした。保温機能が無かったので、炊き上がったご飯は上等なお家は木製の「おひつ」に移してましたが、貧乏な我家では親子5人で食べ切るのが絶対条件でした。
■アメリカの生活京子先生はアメリカの家庭の電化度合いの話していましたが…当時のアメリカの生活をしるには、TVのホームドラマがありました。『うちのママは世界一』 『パパはなんでも知っている』ちょっと毛色は違いますが 『名犬ラッシー』 や 『アイ・ラブ・ルーシー』当時 テレビで見る アメリカの家庭では大人の背の高さ程もある冷蔵庫、その冷蔵庫にはギッシリ詰まった食材その中でも 大瓶の牛乳! トースターやミキサー・オーブンは 日本では見たことの無い機械で庭には芝生、ガレージがあり 当然 大型の自家用車が…そして、最後に どーしょうもなくほどに理解のある「パパ」と「ママ」がいましたね… 。あゝ… 「電気釜」が ようやく 文明の機器だった 我家なのに…
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<ノk size="-1">ヒヤシンスも芽を出した。
2009・1・28ノk>
■パンの耳「はしパン」端パンと呼んでました 我家では、パンの耳のことを。パン屋さんに行って『すいません… はしパン 下さい』と言うとだいたい1斤分が袋詰めにされたものを0円(ただ)で持って帰ったのを 覚えています。だから ちょっと恥かしかったので お店にお客さんが居ないのを確かめて店に入り、持ち帰りました。小学生の4〜5年の頃に、今の値段で10円ほどになり他のお客さんが居ても平気な気分で買ったのを 記憶しています。ほかにも、いわゆる「選外品」をよく、製造元に買いにいきました近所の油揚げ製造店に行っては 「くず揚げ ください」 とか隣町のインスタント・ラーメンの工場にいき 「割れラーメン ください」だとか。あの頃、「チキンラーメン」がバカ売れしたので「続けっ!」とばかりに無名のインスタント・ラーメン会社がいっぱい/\ ありましたね…たしか… 「とのさまラーメン」 ゆーのんがあって… 好きやったなあ
■オート三輪有名なのは、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の「ミゼット」ですね、ダイハツの。あとは「マツダ」が 大型のを作ってましたね。街角でよく転倒していて「そこの、ぼく、てっとて手伝って!」と言われ微力ながら「えいやっ!」と起こした記憶があります。まあ 転倒するといっても 低速走行なので ケガ人もなくカーブに弱いだけのオート三輪でした。オート三輪を起こしたお駄賃に、幌のなかに散乱していた商品を木材・野菜・醤油・米・クギ・ネジなんか くれるのが シキタリみたいに 貰ってました。昭和36年・「ミゼット」の発売価格 22万8千円・大学生の初任給 1万円少々だから…あの「ミゼット」の値段が4〜5百万円になる計算なりますね…!
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わー菜の花咲いてる
2009・1・27
■幕下の番付『幕下の番付』についで も少し書きます。「低いレベルで、同程度」 「似たり寄ったり」実際の大相撲の番付表の幕下以下には『ゝ』が並んでいます。『ゝ』は「ちょぼ」と読むので『ゝゝ』は「ちょぼちょぼ」となります。『ゝ』を実際にキーボーで出そうとしますと、「おなじ」と かな打ちし変換すれば『ゝ』がでます。「人間、みんな、ちょぼちょぼや」 小田実/ベ平連元代表
■学校の朝礼大学生の息子が小学生だった頃に聞きました。『毎朝、朝礼ってやってる?』と「朝礼?」『校長先生が訓示を垂れる… ってーか 何かゆー って あれ?』「教室で 朝 放送やってる あれのこと?」教室で放送になってんのんか… 今は…ワタクシの頃は、毎朝校庭で だった記憶があります。校長の「お言葉」は子供心に残っているは、ほとんどナシで体育の先生が「こら!静にせんかっ!」と 恐かったのは覚えています。息子が高校生の時の話で「全校集会を校庭でやったんだけど… バタバタって倒れる人が続いて… 中止になったよ…」
■ダルマストーブワタクシの小学校の冬の教室の暖房は「ダルマストーブ」でした。「石炭係」というのがあって… 「日直」の兼務だったかも…朝早く 石炭置き場に行って、小さな石炭山に登るのが好きでした。先生もいない教室で、マッチをすって着火してたんですよ!小学の児童生が… 今なら「危険!廃止!」ですよね…だいたい、1時間目の教室は燃え出した石炭の臭いで酸欠状態になり ちょっと ボー っとしていたなあ。ガラスの様にピカピカしたキレイな石炭を時々 ポケットに詰め込んで持って帰ったことがありましたっけ… 。
昭和36年1月20日 1959年晴れ間が途切れた途端に、校庭に突風が吹きチエ子の目に砂埃が入った。「痛ぁ!」と小さく叫んで、目を押えると周りのみんなも目をシバシバさせながら、声のする方を見ようとしたが演台の校長先生が「静粛に…」と言ったので、前に向きなおした。「かのーアメリカでは43歳とゆー、若々しい新大統領が 本日 誕生しました…歴代の大統領の中で、一番の若さで、大変 喜ばしいことだとぉ…… 」
朝礼が終りドヤドヤと教室に入ってきた皆を尻目にアホの正男は ダルマストーブに石炭を入れていた。「お前!今日 帰れや!」と デブの山本勝が叫んだ「お前 休んだら 学級閉鎖になんのに、咳 コンコンいわせながら学校へ来んな! 帰れ!」と 軽く正男の尻を蹴った。「ほんまや!あと一人で学級閉鎖や!青洟たらして 学校に来んな!」吉田二郎が正男の首を絞める真似をしながら叫んだ。アホの正男への嫌がらせは、いつものことなのでチエ子は 気にせず 窓の外を眺めていた。
空っぽのプールには枯葉がクルクルと舞っていた大きく渦を巻いては、おさまり小さく巻き上げてはパラパラ散っていく( あの中に 私の『葉子』チャンもいてるんやー )冬休みが終わって 始業式の日に発見したのが『葉子』チャンである校庭で朝礼のとき、チエ子は二宮金次郎像の横に立っている桜の木の枝に 最後の一葉を見つけ出て名前を付けた。『葉子』チャンは3日前の昼休みに、消えた給食を終え、昼の一時間目の授業中に、気が付いた。チエ子は 何か ポッカリと 穴が 開いたような、空虚な気持ちになった。あのプールの中の一番元気よく舞い上がっているのを( あれ!『葉子』チャン… )と 決め なんだか 安心して眺めていた。「給食 喰いに 来たんと ちゃうわい!」 アホの正男の声が聞こえた「貧乏やけど… 給食と ちゃう!」さっきより 大きな正男の叫び「おかーちゃんが『皆勤賞 取れ』ゆーんじゃ!アホやけど… 皆勤だけわ 取っときぃ……」と涙声に変わった「すまん… 冗談やん…」と山本勝が正男の肩に手を掛けた「分かってるやん シャレやん…」と吉田二郎がニヤケて言ったので「オレの家 貧乏 ゆーねぇやったら 吉田の家は 金持ちかっ!?」と むきになって正男は反撃した「この前 お前 パン屋で パンの耳 買ぉとったん知ってんねんどー!」涙で鼻声になっている「お前の靴の先っちょ 両方とも 口開いてゝも 金持ちかっ!?」ヒクヒク…となりウエ〜〜ン!と大泣きしてしまった。ガラガラと教室の扉が開きレモンの匂いと一緒に、京子先生が入ってきた。「戦争が終わって、日本は今 大変な時代になっています」全員が着席し、静まり返る中 京子先生はゆっくりと話し始めた。「このクラスの約50人の中に、『金持ち』と呼べる人はいますか?」みんなは周りをキョロキョロし(金持ち)探しをしている「アメリカのケネディー新大統領は国民に景気回復を約束していますが、そんなアメリカでも、国民は ほぼ全員 オーナーカーつまり自家用車を持っていて電気冷蔵庫があり、電気掃除機もあり、電気洗濯機も電気で部屋の温度を調節する機械もあり、電話なんか当然、持っています」「へーーっ!」と ゆー声と どよめきが上った。「電気釜(炊飯器)が 家にある人?」と京子先生は質問した30人位の生徒が手を挙げた「電気洗濯機は?」 7〜8人の手が「じゃー、お家に自動車のある人?」「はい!」と手が挙がったので 皆が注目した「うちの工場こうばに、ですけど… 『ミゼット』があります!」学級副委員長の赤毛の佐々木珠美であった「あほ!あれ オート三輪やんけ!」と誰かが叫び教室中がドっと笑いがおこった「学級の中で… いえ、学校中で 誰が『貧乏』で誰が『金持ち』かなんてことを、言えるほどには 日本は まだ成長していません…」一呼吸おいた京子先生「みんなが世の中に出るようになった頃には、ほんまの『金持ち』が現れるかもしれません… それは 実は、正男くん だったりします…」「あれへん…あれへん…」 正男が下を向きながら言った「いいえ!正男くんは大変 お母さん孝行なんですっ こんな人こそ将来の日本の社会が 放っておくわけ 絶対ないと 先生は思っています…」シーンと静まり返る教室。
京子先生は肩の力を抜き「まあ クラスの全員が… 日本全体が… まだ/\ 『幕下の番付』ゆーことです…」と 言い終え 「わかったー!?」とニコニコとクラスを見回した「先生 『幕下の番付』て なんですか?」と 声が掛かった。「チエ子さん 知ってますよね?」と 突然 指をさした「は はい、おとーさんが よー ゆーてる大阪の洒落言葉で『小さい字で チョボチョボしてゝ みんな 点々に見える』ゆーことです…」「その通りです」「『50歩100歩』の同じ意味ですか?」「『目糞 鼻糞 笑う』と 同じー?」「『目やにが鼻垢を笑う 』は」?「『鍋が釜を黒いと言う』もですか〜?」「『団栗の背比べ』は?」ストーブの熱がようやく教室中に回りだしたのか斜めの陽射しのせいか、ポカポカして、チエ子は眠たくなってきた。
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桜の枝にリボン・・・開花の目安木?
2009・1・23
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姿勢が良いね
2009・1・20
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Click !
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みかんにつられてヒヨドリ現る。
2009・1・19
きのうの夕方、矢間本くんから電話が入った。「あっ 苦労さん!? 矢間本でーす」『佐智彦くん かー?』「覚えてはりますー?」から はじまった 会話彼は、30年前のメンバーで 創成期の『por-asisst』から『有限会社8oz』に変更した時代のチーフ的な人であった。「ほな 日曜日の夜に 伺いますわ」と ゆーことで 明日 会うことに。
そんな話を妻に伝えたら「そー いえば… 綿鍋さんが 今日 フロントに 顔を出す って 言ってたわ」と ゆー彼は、「バブル崩壊」「阪神大震災」の時のAタイプ・メンバーで毎夜/\ 不況打破のミーティングをし 『猫の手チーム』を立ち上げた時代の人である。4〜5年前に京都・蹴上のホテルで披露宴に呼ばれて「かんぱ〜い!」の音頭をとらされたのを思い出す。賀状は沢山の元8ozからの来たけれどみんな、元気にしてるか?千人ほどの 元8oz たち … ?
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絵のような雲
2009・1・16
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青空
2009・1・15
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西宮の戎っさんには おばけ屋敷も出現
2009・1・13
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Click !
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めがねの世界
2008・1・10
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鴨の滝登り?
2008・1・9
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山の郷は雪でした
2008・1・8
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カモ 鴨 かも
2008・1・7
昭和36年 元旦。
「明けまして、おめでとうございます。」と三人で大合唱した。
「ほなっ、住吉っさん、行くでー!」と勝男の大号令のもと、全員お出掛けの準備に入った。「妙子、お義母さんに貰ぉた、徳利のセーター出してー!」と勝男が言うと
「えっ? その着物で、行きはるんでしょ?」と妻の妙子が聞いた。
「この大島紬の上から着んねん」「え… 嘘でしょ…!?」
「今どき そんな古臭いこと、ゆーてたら、あかん/\ ニュー!ファッション!」
「おとうさんが「良い」言ぃはんねやったら「あれ」やけど…なんか、変やわぁ…」
「いち/\ 大島紬 脱いでたら 又 着んのん面倒やし」。娘のチエ子、ニヤニヤしながら「おとーさん「大島紬」ってポリエステル100パーのことー?」
「あのなー、犬やら猫に名前があるように、この着物にも「大島紬」ゆー名前、あんねんわ〜い!」
と おどけた顔で答えた。
「はい!はい! ほな、出掛けますよ…!」と妙子は急かせた。
正月の町は止まっているように見えた。風もなく、穏やかな暖かさ。
それぞれの家に飾られている日の丸の旗は、のんびりとお辞儀をしているようだ。ガード下の商店街も人っ子一人いない。
チエ子は店先の正月用の貼紙を一軒/\眺めた。
太い墨文字で「迎春」「謹賀新年」「賀正」「初売り」などと書かれた背景に
「宝船に七福神」や「門松」や「梅に鶯」を金色や銀色、あだっぽい色使いの
錦絵のように艶やかで(わぁ、お正月や!)とチエ子はウキウキした。天王寺でチンチン電車に乗り換える。
自動車や通行人もほとんど見かけないが、さすがに電車内は混雑していた。
住吉大社の真ん前で降りて、見渡すと、人だらけである。
「わー!大阪中の人間 集まって来たんと違ぅかぁ…!」と素っとん狂な声を上げた勝男。
「戦後最高の人出の予想って、ラジオでゆーてたわね…」と妙子「屋台が一杯あるわー!」とチエ子。
参道には砂埃がこんもり立っているのが見える。
玉砂利の道、勝男の袖を握ってチエ子はキョロキョロと屋台を見回している。
「りんご飴、買ぉて!」「家、帰って「りんご」と「飴」一緒に食べたら 良ぇー!」
「ヒヨコ釣り!ピンクのん欲しい!」「雨降ったら 黄色に戻る!」
「わー! 飴細工!」「口ん中に入れたら ただの「飴ちゃん」」
「あっ、バナナの叩き売りー!」「コレラにかゝる!」
「あそこ、見世もん小屋やん!見たい!」「あかん!寝小便する!」
「えっ!」と、絶句するチエ子「なんで…?」と小声になる
「あんなん見たら、寝るときに、思い出して、恐ぁになって なー」
「ふん」「一人で便所、行かれへんよーになんねん」
「ふん、ふん」「しまいに、ウトウトーとして… ほんでからに、ジャーってなってまうねん」
「ふーん、そやのん…」とチエ子、妙に納得してしまった。
太鼓橋、「あれ、渡ったら「お祓い」になんねんけど… ずっコケたら…又「あれ」やしな…」
と勝男がつぶやく。「複雑骨折に…?」と妙子は首を傾げた。この「複雑骨折」とは、こうである。
去年12月の末、通天閣の近くの料理屋で働いている勝男が、深夜に酔っ払って自転車で帰宅し、
倒れ込むようにグーグーと寝てしまった。
妙子は自転車を玄関の土間に入れようとすると、ハンドルは曲がっているし、
前輪の泥よけも折れていたので(酔って、どこかにぶっつけはったんかな…?)と思い、
勝男の寝姿を見てみたが、これといってケガはしていないので安心して消灯した。次の朝、勝男は右足の親指あたりが「痛いっ!」と言い出し、妙子が「医者に診せるように」言うと、
元来 医者嫌いな勝男は「自分でギブスを作る」と言っては、割箸を添え木にし、
包帯でグルグル巻きにし、何故か大量の「葛根湯」と「養命酒」を飲んで、寝てしまった。夜中に勝男は目覚め「痛い!痛い!」と大騒ぎの末「複雑骨折でっ死ぬんちゃうか!!」と
大声を張り上げ、気絶してしまった。
妙子は医者に走るわ、チエ子は「死ないといてーっ!」と泣きだすやらの大わらわ、
それを聞きつけた、町会長の藤原のおばちゃんが(えらいこっちゃー!)と、
勝男と妙子の実家に電報を打ったので、大きな騒動に発展した。パジャマ姿で町医者の北川先生は「とりあえず鎮痛薬を…」置き「また、明日の朝 来ますわ」と
言い残して帰っていったが、次の朝が大変であった。奈良の法隆寺前で小さな食堂を営んでいる勝男の母は「勝っちゃん!あかんのんかー!」と
玄関の引戸を開けるなり大泣き。
京都、先斗町で置屋をしている妙子の母も「勝男さん、もー「あれ」なん…?」と
目頭をハンカチで押えながら上って来た。布団を取り囲んで見守るなか、昼前 勝男は「ん、生きてる…?」とキョロキョロ
「なんや?みんな お揃いで!?」と起きだした。
そこに、北川先生が看護婦を伴い往診にきて「ハッハッハー こりゃ、たゞの痛風ですなー!」。
で、全員、カックン!となってしまった。安心した義母二人、仲良くデパートに買い物に行き、
勝男の母は「チエ子ちゃんの正月用に…」と桃色のジャンパー、
妙子の母は「勝男さんに…」と海老茶色の徳利のセーターを買って、
「ほんなら…」と あたふた二人一緒に「えゝ、お年を…」と 帰ってしまった。これが「複雑骨折」の顛末である。
手水場、勝男は手を清めながら「このお義母さんのセーター、軽いけど…温かいなぁ!」
「カシミアで8ozやから、相当 値ぇ張ってるわね…」「カシミヤの?8オンス?」
「高級な毛糸玉8個分も使こてんのよ…」「へーぇ」。
ハンケチで手を拭いたチエ子「京都のおばーちゃん、ほんまに、おとーさんのこと好きやもんねぇー」
とセーターをつまんだ。
参拝を終え、チエ子「うち、屋台でなんにも買わへんかったから、絵馬にお願いごとして、えゝー?」
「えゝけどなー、書くのんは、お父さんに任せなさ〜い!やでー」
「うん、うち、飛行機に乗ってる、おねーさんになりたい…」「OK!OK!ヒッチヤーデスやな?」
「おとうさん…」と小声で「シチュワーデス、です…」妙子つぶやく。
勝男は絵馬に「包丁一本 勝男」「家内安全 妙子」「将来はスチュワーデスです チエ子」と書いて、
最後に「うし」と低く唸って、今年の干支の字を太く書いた。
チエ子は(なんか…座りの悪い字やな…)と思って見ていたが、
勝男はさっさと絵馬をぶら下げ行ってしまった。
「チエちゃん、トイレに行っとけへん?」「うち、今、えゝわー」「ほな、待っといてね…」。
石灯篭の下の鳩の群れに「有り難や節」の歌を聞かせている勝男を、ボーっと眺めているチエ子。
いそ/\と戻ってきた妙子。手を繋ごうとしたチエ子は妙子の指に墨汁が付いているのを発見し
「おかーさん、墨、付いてるけど、どーしたん?」「あ…」妙子は小声になって
「あんね… チエちゃん 気ぃ付けへんかった…?」「何を…?」
「(うし)に(つの)無かったん…?」「うしにつのー!?」「ほら…おとうさんの漢字」
「あーーーっ! おとーさん「午」って書いてはったんやねー!」
「そーやねん…」「ほな、今、(つの)付けて「牛」にして来たん?」「そ…」
「おかーさんって、内緒の功やね…!」と、そこへ何も知ないで戻ってきた勝男は
「チエ子!なにを間違ぉたこと、ゆーてんねん「ないしょ」やのーて「ないじょ」やでー!」
と言ったから、二人は顔を見合わせ「内緒っ!」と声を合わせた。
「おとーさん、神馬がいてる小屋へ行きたい! 白い馬 見たいねん!」「牛年やのに馬を拝むんか?」
「うん!」「馬に今年もよろしくお願いしますってゆーのん?」「うん!うん!」と、ニコッとしたチエ子。
「おとーさんに質問!」「おーっ!」「そーゆー「うま」に「つの」付けたら、何になりますかー?」
「そんなん、分からん! ま…「うましか」の「馬鹿」か「まぬけな牛」やろな…」
「へへッ!ちょっとだけ正解でーす」。と、急に、勝男は声を落として「あれぇ…? そーゆーたら、さっきの「牛」……」
と絵馬掛所をジーっと見詰め、「ちょっと待ってゝ!」と下駄をカラコロ鳴らして駆けて行った。
「おとうさん!気ぃ付きはったんやわ…!」と妙子は浮き/\とチエ子にウインクをし、
チエ子も送り返そうとして、両目をつむってしまい、笑う二人であった。
しばらくして、下手なスキップしながら、ガランゴロンと勝男が戻ってきた。
「よーし!みんなで手ぇ繋いで、白馬ちゃん 見に行こー!」と勝男、スッキリした声で言った。
「そーしよっ、そーしよー!」「そーですね… 」。
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初出
2009・1・6